※本記事は『日経ビジネス 教育特集号 AUTUMN.2025〈東京ストーリー〉(日経BP社)』に掲載されたものです。
英語科・広報副部長
田中 裕樹 先生
多彩なプログラムによるグローバル教育に定評がある富士見丘中学高等学校。2015年に文部科学省からスーパー・グローバル・ハイスクール(SGH)の指定を受けたことを機に教育内容を徹底的にブラッシュアップ。その後、ワールド・ワイド・ラーニングコンソーシアム(WWL)開発拠点校や、DXハイスクールにも採択されるなど、今、勢いを感じさせる学校の一つだ。海外・国内ともに大学進学実績が伸びている背景を含め、教育姿勢や取り組み内容について広報副部長の田中裕樹先生に話を聞いた。
これからの時代に求められる力、社会で力を発揮するために身につけておくべきスキルとは何か。同校が教育目標に据えたのは「グローバルコンピテンシーの育成」だ。それを支える3本柱が「探究学習」「ICT活用」そして「英語4技能教育」。2015年のSGH指定以降、この3本柱のブラッシュアップに注力した結果、近年、その成果が大学進学実績や外部コンテストでの受賞歴など、目に見える形で出始めている。
同校の教育の特徴をひと言で表すなら、「徹底面倒見」だろう。たとえば英語教育では、学習歴や習熟度に応じて設定する4つのコース別に少人数授業を行い、4技能の向上を目指す。「英語力を伸ばすためには何が必要か。原点に立ち戻って考えたとき、新しい手法も採り入れながら地道でていねいな取り組みこそ大事だというところに行き着きました」と、新旧融合のバランスの有効性を説く田中先生。では、その4技能に対してどのような教育をしているのか。「話す」を例に挙げると、週6〜8時間の通常の英語授業に加え、中2から高2までは毎週、ネイティブとのオンラインスピーキングがある。「毎回、本校独自の振り返りシートに、習得した会話表現や上手に伝えきれなかった表現を生徒が記入していきます。それを教員がすべてチェックし、本人にフィードバックしています」という手厚さだ。自身の学びを積み重ねたシートは生徒オリジナルの英会話のハンドブックにもなる。
「書く」面でも、「徹底面倒見」の指導が貫かれている。「ライティングの宿題を毎週末に出します。中1には『英語日記』、中2以降では『エッセイ』を書くことになりますが、それをネイティブと日本人の教員がチェックします。
ネイティブ教員は9名在籍。
日本での指導経験が豊富で、万全のサポート体制が整っている
コラボ添削と呼んでいるのですが、ネイティブはおもに表現を、日本人は論理構成をというように、複合的に2人がかりで添削を行ないます。」
これら「話す」「書く」だけでなく、「読む」「聞く」も、個を見据えた複数の強化プログラムがある。ここまで手間をかけてサポートしている学校は、そう多くはないだろう。「当たり前ですが、個別にていねいに向き合うと、生徒は伸びます。それは、『話す』『書く』だけでなく4技能すべてが、さらには英語以外の教科にも波及します。」
昨年度は中3の75%が英検Ⓡ準2級、高3の80%以上が英検Ⓡ2級以上を取得した。GTECのスピーキングテストでは、帰国生ではない一般入学の中3生の平均が全国の高3生の平均スコアを超える年もあるという。
毎年2月に行われる「WWL課題研究発表会」。
全校生徒、保護者、省庁からの来賓や大学教授を前に、高2生が探究成果を英語で発表する
一方、「探究学習」は、中1から高2までの全生徒が自主テーマを追究する「自主研究5×2」や、社会課題をグループで探究する高1・2の「グローバルスタディ基礎・演習」など、プログラムが豊富だ。中でも「グローバルスタディ基礎・演習」では、慶應義塾大学大学院をはじめ、国内外の大学や研究機関と連携してプロジェクト学習やゼミ形式での探究を行い、その成果を外部に向けて報告・発信する機会も多い。
こうした探究学習の取り組みは、大学進学にもつながっている。近年、同校の7割程度の生徒が推薦型・総合型選抜で大学に進んでいる。「探究学習で掘り下げたテーマに、大学で引き続き取り組む卒業生も少なくありません。大学側も高校時代の取り組みの質や熱量をきちんと評価してくれているように感じます」と、同校の探究学習への評価も、進学実績が伸びている要因の一つだと田中先生は分析する。
また、「ICT活用」では、コロナ禍以前の2017年度からいち早く1人1台のノートパソコンを用い、さまざまな学習機会で活用するとともに、中1では学校設定科目「ICT」を週1時間設け、リテラシー教育を含めたスキル向上に取り組んでいる。
2024年には、文部科学省がICTを活用した文理横断的な探究的な学びを実践する学校を支援する「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」に採択され、生成AIや3Dプリンターなどが使用できる学習室「3Dラボ」を整備した。身につけたICTスキルは、探究学習の統計調査やデータ分析に生かされて成果発表の充実につながるほか、さまざまな教科学習やプレゼンテーションなどにも生かされている。
これら「英語4技能教育」「探究学習」「ICT活用」という縦軸に、「徹底面倒見」という横軸を通すことで、それらが連動し、さらなる相乗効果を生み出している。
ICTの活用により、協働的な学びの機会が増え、
授業は一層活発なものになっている
「徹底面倒見」は、手間がかかる一方で、生徒たちの力を引き上げる効果があると、田中先生はあらためて強調する。「きちんと支えて、もう一歩背中を押してあげることで、生徒たちは確実にぐんと力を伸ばしていきます。」
この春、一般コースで中学に入学した生徒が、オーストラリアのモナッシュ大学に進学した。モナッシュ大学は世界大学ランキングでも高く評価されている難関大学だ。「入学時には海外大学進学など考えていなかったと思います。日々の授業を通してしっかりと英語力を磨き、在校時に勇気を持って海外留学に飛び出して行き、その経験を踏まえて海外で学びたいという動機づけを確かなものにして、実際に合格を手にしました。」
また、同校の「探究学習」が推薦型・総合型の大学受験との親和性が高い一方で、身に着けた英語力を発揮しながら一般入試で難関大学に進んでいく生徒もいる。「大学進学でいえば、英語資格の取得と教科学習をしっかり積み重ねての一般受験はもちろん、英語4技能と探究学習などによる総合力での推薦型・総合型選抜。生徒の目標や適性に合わせて、どちらもしっかりサポートします」と、一人ひとりに目を向けた教育を実践していると田中先生はいう。「あくまでも学校の基本は集団型授業ですが、集団を構成する生徒たちはやはり一人ひとり違う個性を持っています。できる限り寄り添い、それぞれの強みを生かせるように対応していきたいと考えています。」「徹底面倒見」は学校側の負担も大きい。しかし、そうした姿勢でないと、本当の意味で生徒の力を引き出せないと実感していると語る。
同校には、春・夏・冬の特別講座をはじめ、ハイレベルな内容の講座や補習、英語資格対策講座など、多種多様なプログラムがある。学期中も始業前のStudy 0、放課後のStudy 7など、生徒のニーズに応じた学習機会が設定されている。学習習慣やリズムを維持しながら、自分に必要な学びができる環境が整えられている。「ぜひ実施している教育内容と、出口としての成果を見ていただき、安心して入学してほしい」と、田中先生は笑顔で締めくくった。
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