※本記事は『日経ビジネス 教育特集号 AUTUMN.2025〈東京ストーリー〉(日経BP社)』に掲載されたものです。
校長 井家上 哲史 先生
明治大学付属明治高等学校・明治中学校は明治大学唯一の直系付属校。約9割の生徒が明治大学に進み、そのほぼ全員が第一志望の学部に進学している。このため中高一貫、6年のうちに夢や進路を定めれば、適性に応じた大学での学びや必要な能力の育成に早くから取り組むことが可能だ。同校では明治大学との連携及び卒業生の人脈を活用し、高大連携をはじめとするさまざまなキャリアプログラムを行い、司法試験や公認会計士、国家公務員などに多くの人材を輩出してきた。井家上哲史校長が同校が実践するキャリア教育について語った。
井家上 本校では、高校1年時に、特別進学指導講座という形で明治大学全学部の学部長より学部紹介を受ける機会があります。その際、明治大学駿河台キャンパス、そして生田キャンパスを訪れるのですが、特に理工学部と農学部のある生田キャンパスでは実験施設や農場などの見学も行います。中には内容がチンプンカンプンということもあるでしょうが、大学の雰囲気を肌で感じながら、高校で培う基礎学力や教養がなければ大学での学びが進まないということを認識してもらう狙いもあります。私が理工学部教授だからというわけではないですが、生田キャンパスで研究施設などを直で見ることで、生徒たちは大学での高度な学びを実感できるようです。
井家上 高2の前期は文系・理系の10学部すべての学部の教員が本校で直接授業を行うので、自分が進むべき学部をイメージすることができるでしょう。
春・夏・冬の各休暇中には明治大学と連携して短期集中講座を開催しています。春には簿記等の資格取得を。夏は長期にわたるので模擬裁判、理科実験など、高校の正課科目にない学びを体験することで、進路を決める助けとなることでしょう。高3の3学期には英語力向上のためにTOEFLなど英語に特化したプログラムが用意されています、大学に進学後、留学を希望する生徒にとって、求められる語学力養成にうってつけといえます。
井家上 高3になると、学部選びもほぼ決まってきます。そこで、本校では希望すれば高校在学中に、明治大学の講義の一部を先取り受講できる制度を設けています。それがプレカレッジプログラムです。
そこで修得した単位は、大学進学後に明治大学の学部単位として認定されます。最大12単位まで修得が可能です。1科目ないし2科目、2~4単位を修得する生徒が、ほとんどですが、中には5科目10単位、修得した猛者もいます。
本校の生徒は、基準を満たせば、ほぼ全員が明治大学の第一志望の学部に進学します。この高大連携のプログラムをフルに活用すれば、自分の適性と究めたい専門性が見つかるはずです。そしてどんな仕事、キャリアに進みたいかを段階を踏んで考えられることでしょう。
心の底から何を学びたいか、自分に問いかけることで、学部選びのミスマッチを防ぎ、大学での4年間をより有意義な時間とすることができる――。それが高大連携の意図であり、最大の狙いでもあるのです。
井家上 本校には、明治高等学校・明治中学校のOB・OGで構成される総明会という同窓会組織があります。2016年からは大学2、3年生を対象に就職セミナーを開催し、明治高校卒業生の就職活動を全面的にバックアップしています。こうした同窓会組織の先輩方の支えは心強くありがたいものです。
2018年度からは、明治大学や総明会の支援もいただきながら、キャリアクエスト講座を行ってきました。そこでは裁判傍聴会、建築実習、司法試験講座、国家公務員講座など、生徒の興味関心に合わせて設定されたテーマ別の講義が展開されています。講師は明治大学の先生方やOB・OGの方々。在校生にとっては、キャリアが学べる、新鮮で刺激的なイベントとして定着しています。
今年は「大学卒業編」として、来春、新たな進路を歩む大学4年生によるパネルディスカッションを開催。
キャリアクエスト講座の写真(大学卒業編)
大学の日常生活から、講義やゼミ、インターンシップ、さらには大手金融会社や外資系コンサルタント会社に内定に至った就職活動を、赤裸々に語ってくれました。
講義やディスカッションが終わった後には、質問の時間も設けられ、参加した生徒たちはOB・OGに個別に質問や相談を持ちかけ、先輩方も面倒見よく答えてくださっています。
ロールモデルとしてイメージしやすい先輩方のこうした様子に、多くの在校生が刺激を受けているようです。
当時、卒業生を教えていた先生に話を伺うと、必ずしも優等生ばかりではなく、クラブ活動や生徒会活動に打ち込んだ先輩たちが、これという自分の進路を決めて一念発起して、司法試験や難関の大手金融会社や外資系コンサルタント会社に受かった方たちなのだそうです。
OGのある方は、「なんでもやってみる、やろうとすることが大事、今しかできないことをやろうね」と語りかけていたのが印象的でした。そうした気概が、ここぞというときの集中力を生み、自分が進むべきキャリアの獲得につながるのでしょう。
キャリアクエスト・エクステンション講座
(経営学部GREAT公開講座参加)
井家上 明治大学経営学部「GREAT(グローバル経営人材育成トラック)」主催の公開講座のことですね。エクステンション講座という形で校内で参加者を募り、本校から約20名の生徒が明大和泉キャンパスへ赴きました。
この6月に行い、本校からは20名が参加しました。テーマはリーダーシップをテーマとした全編英語の講座でしたが、優秀な大学生の中でも物怖じせずにディスカッションに参加し、グループを代表して意見を述べるなど、強い存在感を示してくれたと、講師の先生からも高い評価を頂きました。
バリエーションに富んだキャリアクエスト講座を参加することで、自分が進みたいと思えるキャリアの選択肢を見出してほしいのです。
井家上 今後充実させていきたいポイントです。今年から、春休みに実施してきた理工学部との中大連携セミナーを夏休みに移しました。既存の高大連携セミナーと絡めて、一部の講座には中学生から参加できるようになりました。一部の学部からは、早い時期から学問の面白さを知ってほしいという要望もあり、中学生段階から大学の学びやキャリアについて考える機会も増えてきています。
誤解してほしくないのは、キャリアとは仕事探しという意味ではありません。
明治高等学校・明治中学校が掲げる校訓「質実剛健」「独立自治」には、学問を修め、健やかに育って、「第一級の人物」となり、社会をリードすること。学問の独立を保ち、互いに切磋琢磨し、時には協力し、問題解決を図るという意味があります。
そして私たちが追求するキャリア教育とは、中学・高校・大学を卒業し、その後の長い人生を送る中で、生徒が幸せになるためのものです。
幸いにも明治高等学校・明治中学校は長い伝統を誇り、社会に巣立って、さまざまな世界で活躍している先輩が数多くいます。繰り返しになりますが、本校の卒業生はとても面倒見がよく、頼れる先輩たちばかりです。また教師や学校職員もしかり。「オール明治」の精神で生徒たちの針路を導いてくれます。
明治大学付属明治高等学校・明治中学校 お問い合わせ先
TEL.042-444-9100
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