※本記事は『日経ビジネス 教育特集号 AUTUMN.2025〈東京ストーリー〉(日経BP社)』に掲載されたものです。
今年度からは新たな教育プログラム「グローバル・コンピテンス・プログラム」を導入し、大学と連携しながら進める教科横断型の「Creative Learning」にも意欲的に取り組んでいる東京家政大学附属女子中学校・高等学校。長年培ってきた「25歳の私」を描くキャリア教育は、さらにバージョンアップ予定だ。
左:国際教育支援部長 岩川 直子 先生
右:中3学年主任 根岸 一真 先生
「グローバル・コンピテンス・プログラム」(以下、GCP)は、OECD(経済協力開発機構)が提唱する概念に基づき、グローバル社会を生き抜くうえで、必要なスキルや行動力を身につけるための能力を獲得するために開発された教育パッケージだ。
導入の経緯について、国際教育支援部長の岩川直子先生は次のように語る。
「引率で本校の生徒を海外に連れていくと、自己主張せずに一歩引いてしまう場面によく遭遇しました。一人の人間として誰とでも対等にコミュニケーションがとれるようになってほしいと思い、今年度からGCPを導入しました」
グループやペアで意見を交えながら、自分自身や相手、社会への理解を深める
GCPは中1~3の英語または英語探究の授業のなかに、週1回ずつ組み込まれて、ネイティブ講師によるオールイングリッシュが基本だ。
「英語を使うことが目的ではありません。コミュニケーション力や伝える力を培うことが目的ですから、英語で表現できなければ日本語を使ってもいいことにしています」(岩川先生)
中1・中2は、自分を知り、相手を知ることからスタートし、社会や世界の国々に興味を持つように授業が展開されていく。中3では、より深い思考や認識が求められる。たとえば、「自分を知る」というフェーズでは、自分は他人と違うユニークな存在だとか、自分の強み、大切にしている習慣(ハートハビット)などを意識化させ、自身の存在意義を確認するようなところまでもっていく。
「こうしたアプローチは通常の英語の授業ではできないため、GCPが果たす役割は大きいと期待しています。どんな場面でも相手の価値観を尊重しながら積極的に発言、行動できるようになってほしいですし、究極的には自分のコアを持ち、自分らしく生きる女性になってほしいと願っています」(岩川先生)
一方「Creative Learning」は、昨年の中2から始まった教科横断型の教育プログラムだ。一言でいえば「オリジナルのピザを創作すること」を目標に、各教科で横断的に学習するというものだ。
立ち上げた中3学年主任の根岸一真先生はその狙いについて次のように話す。
「教科の学びを教室の中だけで完結させるのではなく、教科と社会がつながっていることを何とか実感させたいと考え、今回の学びの形に至りました。また、本校独自の体験プログラムとすることで、"家政らしさ”を感じ取ってもらいたいと考えています」
同校は同じキャンパス内にある東京家政大学のリソースも活用した学びを実践している。今回は、大学造形表現学科がもつピザ窯を活用し、8教科が関連した授業を組み込んだ。たとえば国語(ピザのコンセプトやPR文の制作)、英語(ピザ販売のロールプレイ)、理科(ピザに使う天然酵母の培養)などだ。
「ピザ作り当日は大学教授の協力もあって大盛況。生徒たちはピザ1枚にも様々な知識や技術、歴史などがあることを知り、教科で学んだ知識が世の中でどう生かされているかを知るきっかけになったと思います。今年度の中2は、仮想出店等アントレプレナーシップ教育にも力を入れたいと思っています。中3でも新しいことができないか模索しているところです」(根岸先生)
広大な敷地に、中学から大学院までがワンキャンパスで展開。それを活かして中3から大学の授業を受けられるプログラムがある。大学の施設を活用できるのもワンキャンパスだからこそ。早くからキャリア教育にも取り組み、25歳での自分像を想定した家政大附属独自の「ヴァンサンカンプラン」を実践している。大学が就職率の高さ1位になったこともあり、近年内部進学推薦枠が拡大している。
安田教育研究所
代表 安田 理 氏
東京家政大学附属女子中学校・高等学校 お問い合わせ先
TEL.03-3961-2447
> 学校ホームページはこちら※本記事は『日経ビジネス 教育特集号 AUTUMN.2025〈東京ストーリー〉(日経BP社)』に掲載されたものです。