※本記事は『日経ビジネス 教育特集号 AUTUMN.2025〈東京ストーリー〉(日経BP社)』に掲載されたものです。
華族女学校をルーツに持つ学習院女子は「その時代に生きる女性にふさわしい品性と知性を身につける」を教育理念に掲げ、極端な先取り学習とは距離を置き、深みのある教育を展開している。勉学の意義やおもしろさを知り、大学でも積極的に学びに参加する卒業生が多いという。
器楽の授業の様子。八重桜祭や卒業演奏会においては、授業の成果を発表する
学習院女子には、「本物に触れる」「過程を重視する」「表現力を身につける」の大きな教育の3本柱があり、すべての教科、学校行事、活動に通底している。
中等科では、とくに実技・実習・実験といった体験的な学びを重視し、本物に触れて学んでいくプロセスを大切にしている。たとえば数学ではプラバン(プラスチック製の薄い板)を切って組み立てて正多面体などの立体を作る、作った立体を開いて展開図にするなど手作業を通して平面と立体の関係を感覚的につかむ力を磨く。
表現力に関しては、「表現」という授業を用意しているほど力を入れている。どの教科も、調べたことや考えたことなどを発表する機会を授業のなかで数多く用意し、プレゼンテーションの能力を鍛えている。国語科ではコンクールに入賞した読書感想文やエッセーなど、優秀なものを生徒作品集としてまとめ、それらを読み合うことで、文章表現を切磋琢磨する環境も作っている。
これら3つの柱を下支えしているのが、芸術関連の授業だ。教員は表現者としての活動も行い、芸術を学ぶ施設も充実している。音楽でいえば、2つの音楽室に加えて複数の練習室を備え、貸し出す楽器も豊富に用意。広大な工芸教室には、陶器を焼く電気炉や各種木工機械が揃っているほか、西洋画専用、日本画専用の教室や、書道の専用教室もある。本物に触れ、芸術表現を学ぶプロセスがこれほど充実している学校はあまりないだろう。
幾何では作図や模型製作など、具体的な作業を通して
抽象的な概念を構築
コンクールに入賞した俳句、短歌、読書感想文やエッセーなどを
まとめた「生徒作品集」
中高一貫校にありがちな先取り学習とも無縁だ。「進度よりも深度」をスローガンに、各学年で学ぶべき内容をしっかり学んだ上で、時間的な余裕を、より深い内容の学びにつなげている。そのため、生徒は勉強する意義や喜びを知って大学に進学していく。
ICT教育、STEAM教育、グローバル教育にも全生徒を対象に取り組んでいるが、とりたてて強調はしていない。それらはすでに特別なものではなく、日々の授業実践のなかに、ふんだんに組み込まれているからだ。各種海外研修プログラムは、希望者が参加する語学研修から英語力の高い生徒の力をさらに伸ばすハイレベルなものまで幅広く用意されている。
中高6年間は、心身ともに子どもから大人へと成長する大切な期間でもある。同校では成長過程で生じる心とからだのさまざまな課題やその解決策を学ぶ、「ライフサイクル講座」を提供している。学年ごとに親子で学べるようにデザインされており、女子校ならではのきめ細かな教育的配慮が伺える。これも伝統校ならではの強みといえよう。
おしとやかなお嬢様の学校というイメージを持っている人が多いが、運動会もできる広いグラウンドのほか、テニスコート、バレーコート、バスケットコートがそれぞれあり、体育館も2つと、体育施設がものすごく充実。年間を通して泳げる温水プールがあり、週3回の体育の授業のうち1時間は水泳。卒業までには、全員が自由形、背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライを泳げるようになる。体力がある逞しい女子が育っている。
安田教育研究所
代表 安田 理 氏
学習院女子中・高等科 お問い合わせ先
TEL.03-3203-1901
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