※本記事は『日経ビジネス 教育特集号 AUTUMN.2025〈東京ストーリー〉(日経BP社)』に掲載されたものです。
校長 真下 峯子 先生
「世の光となろう」を建学の精神に掲げ、自ら考え、自ら行動する女性の育成に力を注いでいる昭和女子大学附属昭和中学校・高等学校。「SHOWA NEXT」と命名した新カリキュラムも10年目を迎え、本科、グローバル、スーパーサイエンスの3コースの垣根を超えて学び、チャレンジする生徒も増えており、今年度の卒業生20名が海外大学への合格を果たすなど、進路の幅も広がっている。そんなSHOWAの今を、真下峯子校長に伺った。
大学入試改革に伴い、様々な高大連携が模索されているが、昭和女子大学附属昭和では、高校3年の1年間を医学生として過ごすこ ともできる制度を、日本で初めてスタートさせる。
同校は、40年以上前から昭和女子大学との間で「五修生制度」を運用してきた。この制度を利用すると、中高6年間の課程を5年間で修了し、高3になると高校に在籍しながら昭和女子大学の1年次生として授業を受けることになる。飛び級とは異なる制度で、高校卒業資格も得られ、1年早く社会に出ることも、大学5年間で2つの大学の卒業資格を得られるダブルディグリーにも挑戦できる魅力的な制度だ。
この五修生制度が2027年度から昭和医科大学との間で導入される。現在の高1からは、医学部医学科も含めて、同大学のすべての学科が五修生制度の対象になる。同大学とは8年前から特別連携協定を結んでおり、これまで指定校制度を活用して医学部も含め50名以上が進学している実績を踏まえての導入だ。高3になった段階で科目等履修生として昭和医科大学の単位を取得し、入学後はその単位を認定してもらえる仕組みになっている。
昭和医科大学との新たな連携「五修生制度」が2027年度からスタート。
写真は、高校生が「医療シミュレーション体験」に参加した様子
昭和女子大学との五修生制度では、大学1年次になっても週1日は高校に来て、大学生活の様子を確認し、生徒が相談出来る環境を整えている。しかし、昭和医科大学の1年次生は全員、富士吉田キャンパスで寮生活を送ることになっている。
「五修生制度を利用する生徒も当然、高3になった段階で富士吉田キャンパスの寮に入ることになります。そこで、オンラインでの相談や、こちらから出向いて話をするなど、安心して学べるようサポート体制を構築します」と真下峯子校長は説明する。
昭和医科大学は医療系総合大学であり、この仕組みは医療専門人材育成を、受験勉強を超えた専門性でつなげていく試みといえ、シームレスな高大連携の新しい形として注目される。
日々、膨大なデータが蓄積されている現代社会では、データに基づいた意思決定が不可欠になっている。そのため大学ではデータサイエンスを文理問わず必須にする動きが出てきているが、同校でも今年からデータサイエンスの授業を導入している。
「昨年度、文科省のDXハイスクールに指定され、ある程度の予算がついたこともあり、カリキュラムも教科書もオリジナルなものを用意し、学校設定科目として、高2の授業科目に組み込んでいます」(真下校長)
その背景には、4年前から夏休みの特別授業としてデータサイエンスに取り組んできた経験がある。たとえば「渋谷の109(商業ビル)に店を出すとしたら何屋を出すか」「原宿にハンバーガーショップを出すとしたらどこに出店するか」といったテーマを決め、2日間8時間という限られた時間のなかで、仮想のクライアントにリコメンドするといった形で実施してきた。
そのためには、人流のデータや交通量のデータ、隣の店が何かなど、いろいろなデータが必要で、それらを集めて分析する必要がある。「高校生に受ける化粧品のパッケージデザイン」というテーマでは、生成AIで複数のデザイン案を制作し、アンケート調査を行ってリコメンドするデザインを決めるという方法も採った。
「社会に出れば、どんな分野だろうと何かを提案する場合は、数値的なエビデンスがないと受け入れられないことが多くなっています。説得力のある提案の仕方や、データに基づいた物事の考え方などを中高のうちに経験しておくことは重要です。そのため、データサイエンスの授業は、コースに関係なく全生徒が履修する科目として設定しました」(真下校長)
学園内には、アメリカ州立テンプル大学ジャパンキャンパスもあり交流プログラムも充実している。テンプル大学とのダブルディグリーも可能
同校は、中学入学時点で3コースに分かれるが、6年間で興味や関心が変化する場合も想定し、コース変更を比較的自由にできるようにしている。本科からスーパーサイエンスに移る場合は、数学や理科のテストなどをクリアする必要があるが、本科への変更はほぼ認められる。実際、グローバルコースの生徒が医学部をめざしたいと本科に移動するケースもある。
「学びの方向性は3つに分かれていますが、将来の進路はそれにとらわれなくてもいいと考えています。サイエンスコースの生徒でドイツ語に興味を持って学んでいる生徒もいますし、ロボットに関心の高い生徒はコースを問わず大勢います。大切なことは、中高年間の中で何かに興味を持ったり、学びたいと思ったりしたら、そこに思い切って飛び込んでみることであり、本校ではそういう生徒を応援する仕組みを整えています」(真下校長)
生徒のチャレンジが目に見える形で現れているのが、海外大学への挑戦だ。海外大学を受験する生徒は例年、数人程度はいたが、今年度の卒業生は20人が世界の70を超す大学に挑戦して、合格しているのだ。しかもグローバルコース以外の生徒の方が多い。
2年ほど前から学校として海外大学をめざす生徒をバックアップする仕組みを作ってきた。留学に耐えうる英語力強化のため、IELTSのスコアを6.0以上(英検Ⓡ準1級程度)まで引き上げるプログラムや、海外大学にエントリーする際に必要なエッセイライティングのサポートなどだが、こうした仕組みが生徒の背中を押した形だ。
「奨学金が得られるかどうかも含めて全員が海外大学に入学するわけではありませんが、海外大学へのハードルが下がり、生徒の進路選択の幅が大きく広がったことは間違いないと思っています」(真下校長)
今年9月からは、学園の海外キャンパス「昭和ボストン」を利用した「ボストンターム留学」も新しく立ち上げる。本科とスーパーサイエンスの希望者を対象に3ヶ月間英語を集中的に学び、帰国後に英検Ⓡ準1級の取得をめざすもので、海外大学への挑戦をより促すことになるだろう。
探究学習に関しても、新たな取り組みが始まろうとしている。探究の学びの最上位目標を「つくる」に定め、モノをつくる、企画をつくる、組織をつくる、つながりをつくる、そして最終的には価値をつくることをめざし、教員も生徒も、現在の活動で何をつくっているのかをきちんと意識し、言語化できるような授業のあり方へと転換する方向へと動き出している。
学園施設である昭和ボストンには、中学2年時に全員が研修に参加。
また、高校1年時には、本科・スーパーサイエンスを対象とした3か月間のターム留学も実施
このように最近の取り組みは、これまでの昭和女子大学附属昭和のイメージを大きく変えるようなものが多い。
「本校の生徒は、ちょっとした意識の変化で、どんなことにも挑戦していける力を備えています。女の子だからと遠慮せずに挑戦できるような環境をこれからもどんどん作っていきたいと思っています」(真下校長)
英検®は、公益財団法人 日本英語検定協会の登録商標です。
常に動いている学校である。例をいくつか挙げよう。「グローバル留学コース」は全員が必須だった留学を選択制にして名称も「グローバルコース」に変更、逆に「グローバル留学コース」のみだった長期留学プログラムを本科・スーパーサイエンスコースにも広げる。昭和女子大学と行っていた『五修生制度』を連携先の昭和医科大学とも始める、探究活動も一段とブラッシュアップさせるなど、常に“進化”している。
安田教育研究所
代表 安田 理 氏
昭和女子大学附属昭和中学校・高等学校 お問い合わせ先
TEL.03-3411-5115
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