女子伝統校の魅力と展望

東洋英和女学院中学部・高等部

社会をより良くしたいなら
まず自分から動く
それが英和の当たり前

毎朝の礼拝からはじまるキリスト教教育で長い伝統を積み重ねてきた東洋英和女学院中学部・高等部。学院標語「敬神奉仕」が浸透しているためか、「誰かのために」あるいは「世界の理解のために」を掲げて、ボランティア活動をはじめとする自主的な活動に取り組んでいる団体も多い。こうした自主活動に力を入れる生徒たちが何を考え、何をめざして活動をしているのかを伝えることで、東洋英和生の“ありのままの姿”を紹介しよう。

成田 莉緒さん 髙橋 愛未さん 浅野 真白さん

興味の赴くままに 自主活動に参加

参加されている、あるいはされていた団体を簡単にご紹介ください。

ディアコニアの時間に、YWCAメンバーが
中1の教室に行き、手話を教えている様子

髙橋 前年度まで「YWCA(Young Women's Christian Association:キリスト教女子青年会)」の代表を務めていました。YWCAはスイス・ジュネーブに本部がある国際NGOで、キリスト教精神に基づきボランティア活動を行う団体です。学内にとどまらず様々な活動をしています。校内のボランティア団体の中で、最も長い歴史があります。

成田 昨年度まで「TEAM+」の代表でした。Toyo Eiwa Activities for Myanmarの頭文字が団体名になっており、ミャンマーを通して世界について学ぶことをめざしていましたが、21年のクーデター以後は、ミャンマーに限らず世界全体の問題を考えようということで「+」をつけ、様々な国際問題についての理解を深めると共に、自分たちができる活動を模索しています。

浅野 現在「英語ディベート研究会」に所属しています。この研究会ではパーラメンタリーディベートと呼ばれる、イギリス議会を模したディベートを行っています。

与えられたテーマについて3人1組で、賛成・反対の立場に分かれて英語でスピーチを行い、どちらの主張がより説得力があったかでジャッジが勝敗を決めます。国内外の様々な大会に参加することで、論理的思考力や英語力を磨いています。

どのようなきっかけで参加しようと思ったのですか。

髙橋 小学部から敬神奉仕の精神を学び、それを実践できる人になりたいと思うようになりました。ただ、一人だと心細いため、そうした活動をしている団体に所属したいと思い、唯一中1から参加できるYWCAに入ることにしました。以来5年間所属し、中2からは役員として運営にも関わりました。

成田 母が国際協力NGO「ワールド・ビジョン・ジャパン」の活動を支援していて、ケニアの男の子のチャイルドスポンサーだったことから、国際協力には幼い頃から馴染みがあり、部活動以外にそうした活動に関わりたいと思っていました。英和には国際協力に関わるような有志団体はたくさんありますが、TEAM+の活動が私の興味に一番合っていると感じ、募集があった中3から参加することにしました。

浅野 帰国生ではなく、海外経験もないのですが、先輩方がディベートの国際大会で入賞したことを知って興味を持ち、中2から参加しています。

ミャンマー人の技能実習生を招いてお話を聞き、縁日をコンセプトに交流

最初は英語の聞き取りや5分間のスピーチがとても難しかったのですが、顧問の先生からの具体的で分かりやすいフィードバックや、先輩方の優しいアドバイスなどをいただくうちに、次第に自信がついてきて、同じ学年で参加した仲間たちと今も切磋琢磨し合っています。

日々の活動が支える 社会貢献への眼差し

普段はどのような活動をしているのですか。

髙橋 普段の活動は、毎週金曜日の放課後です。休日は学外の児童養護施設などにも定期訪問しています。最も大きな活動は、楓祭(学園祭)で手作りビーズストラップなどを販売し、その売上金をACEF(アジアキリスト教教育基金)をはじめとする様々な福祉団体に寄付することです。放課後の活動では、そのためのビーズストラップなどの制作を行ったりしています。また、学校のキリスト教行事である、皆で花を持ち寄り近隣の福祉施設などに届ける「花の日礼拝」のお手伝いや、中1の「ディアコニア活動」では手話の指導、クリスマスキャンドルサービスの主催も行っています。

成田 TEAM+も定例会は金曜日の放課後です。ミャンマーはもちろん、世界や日本の問題について調べたり、私たちにできることを考えたりしています。デスクワークだけでなく、ミャンマーの少数民族ロヒンギャ出身の女性を招いての講演会の開催や、JICAの地球ひろばを訪問して勉強会を行うなど学校外との接点も大切にしています。昨年度は、インドやインドネシアの人々の生活の向上を支援している認定NPO法人「地球の友と歩む会(LIFE)」で活躍する英和の卒業生の講演会を開催し、生徒会が販売するクッキーの売上金の一部をLIFEに寄付する流れにも協力しました。とにかくできることがあれば何でもやるという方針で活動しています。

浅野 練習日は木曜日の放課後と土曜日の午前中の週2回で、中学生から高校生まで30人程度のメンバーが学年を超えて練習を積み、様々な大会に出場しています。ディベートのテーマは大会当日に発表されるため、普段の練習では、先生が提示してくださるテーマについて、背景を探ったり、どんな観点で主張を展開するかなどについて分析したり、実践したりしています。英語力も大切ですが、ジャッジが重視するのは論理性です。どんな観点から論を組み立てていくかがとても重要で、国際問題の課題解決につながるような意見の提案になれば嬉しいです。

気づきや学びが自分を作っていく

活動を通して気づいたこと、学びになったことはありますか。

今年行われたWorld Scholars Cup(WSC)関東大会に出場し、多数のメダルを受賞、世界大会への出場権を獲得した

髙橋 ボランティアは意識の高い人がやるものだというイメージもあり、ハードルが高いと思われがちですが、実は、本当に小さなことで困っている隣人に手を差し伸べることができることこそ本質だと思うようになりました。ビーズ1つでいい、一人ひとりの行動が変われば社会は変わると信じ、その気持ちを持ち続けたいし、それをみんなにも伝えていきたいと思っています。

成田 3年間の活動を通して、世の中には私たちの知らないことがたくさんあるのだということを痛感し、無関心でいることを本当に怖いと思うようになりました。そのためには情報収集が大切で、自分が知り得たことは他の人も発信したいという気持ちが湧くようにもなりました。

浅野 ディベートのテーマは、貧困や環境問題、ジェンダー平等など多岐にわたります。普段はそういう問題を知っても、それについて友だちと議論したりする機会は少ないと思います。

しかし英語ディベートに取り組んだおかげで、そうした問題に対して深く考えたり、自分ごととして考える習慣が身についたと思っています。

その学びを、将来どのように生かしていきたいと考えていますか。

髙橋 人のために働きたいという思いと、YWCAで児童養護施設や児童発達支援センターでの保育・療育に関わった経験を通じて、将来は子どもの心身の健康を守る児童精神科医になりたいと思っています。

成田 法律に興味が出てきたため、法学部進学を考えています。国内法だけにとどまらず国際法も勉強して、法律と国際協力が結びついたような仕事ができればいいなと思っています。

浅野 医師を目指していますが、英語ディベートを通して言葉が人の心を動かし得ること、グローバルな視点で物事を考える大切さを学んでいるため、国際的な医療現場で活躍したいと考えています。その上で、まずは目の前の目標として、ディベートの大会で上位入賞を目指したいです。

(註)*ディアコニア…ギリシャ語で「隣人に仕える」という意味

安田教育研究所・安田理先生の
女子伝統校
ここ魅力

よく知ると、キリスト教色が強い、かなり“個性的”な学校である。多くの学校のキャリア教育が“何になるか”のルートを探求しているのに対して、「どのような人間になるか」に比重が置かれている/多くの学校が高2から文理分け、国公立私立分けするのに対して、最後までコース分けはしない。さまざまな進路を目指す生徒が同じホームルームで過ごす/全員が進んでボランティア活動に従事するetc.

安田教育研究所
代表 安田 理 氏

東洋英和女学院中学部・高等部 お問い合わせ先

※本記事は『日経ビジネス 教育特集号 AUTUMN.2025〈東京ストーリー〉(日経BP社)』に掲載されたものです。

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